国民保護法によって高圧ガス容器の盗難防止に努めなければならない根拠

※国民保護法において、高圧ガスは「引火若しくは爆発又は空気中への飛散若しくは周辺地域への流出により人の生命、身体又は財産に対する危険が生ずるおそれがある物質」に含まれると定められ、これを取り扱う場所である高圧ガス貯蔵場所等は「生活関連等施設」として「安全の確保に関し必要な措置を講じなければならない」対象とされています。以下、国民保護法の条文です。

 武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律(国民保護法)
(平成十六年六月十八日法律第百十二号)
(生活関連等施設の安全確保)
第百二条
 都道府県知事は、武力攻撃事態等において、武力攻撃災害の発生又はその拡大を防止するため、次の各号のいずれかに該当する施設で政令で定めるもの(「生活関連等施設」という。)のうち当該都道府県の区域内に所在するものの安全の確保が特に必要であると認めるときは、関係機関の意見を聴いて、当該生活関連等施設の管理者に対し、当該生活関連等施設の安全の確保のため必要な措置を講ずるよう要請することができる。
(略)
3 指定行政機関の長及び指定地方行政機関の長並びに地方公共団体の長等は、武力攻撃事態等においては、武力攻撃災害の発生又はその拡大を防止するため、それぞれその国民の保護に関する計画で定めるところにより、生活関連等施設のうちその管理に係るものについて、警備の強化その他当該生活関連等施設の安全の確保に関し必要な措置を講じなければならない

(危険物質等に係る武力攻撃災害の発生の防止)
第百三条
 指定行政機関の長及び指定地方行政機関の長並びに地方公共団体の長は、武力攻撃事態等において、引火若しくは爆発又は空気中への飛散若しくは周辺地域への流出により人の生命、身体又は財産に対する危険が生ずるおそれがある物質で政令で定めるもの(「危険物質等」という。)に係る武力攻撃災害の発生を防止するため必要があると認めるときは、この法律その他法令の規定に基づき、それぞれその国民の保護に関する計画で定めるところにより、当該危険物質等に係る武力攻撃災害の発生を防止するため必要な措置を講じなければならない。
2 前項の場合において、指定行政機関の長若しくは指定地方行政機関の長又は地方公共団体の長は、危険物質等の占有者、所有者、管理者その他の危険物質等を取り扱う者に対し、危険物質等の取扱所の警備の強化を求めることができる。

※見てとれるように、この国民保護法で「警備の強化その他当該生活関連等施設の安全の確保に関し必要な措置を講じなければならない」のは、指定行政機関の長及び指定地方行政機関の長並びに地方公共団体の長等であり、同様に「生活関連等施設の安全の確保のため必要な措置を講ずる」ことを「生活関連等施設のうちその管理に係るもの」に要請するとされています。

 武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律施行令
(平成十六年九月十五日政令第二百七十五号)
(生活関連等施設)
第二十七条
 法第百二条第一項の政令で定める施設は、次のとおりとする。
十 法第百三条第一項の危険物質等の取扱所

(危険物質等)
第二十八条
 法第百三条第一項の政令で定める物質は、次のとおりとする。
四 高圧ガス保安法第二条の高圧ガス(同法第三条第一項各号に掲げるものを除く。)

※その他、毒物及び劇物取締上の毒劇物、火薬類取締法の火薬類、原子力基本法に規定する核燃料物質等、細菌兵器、化学兵器なども危険物質等とされています。

※では、各県の行政の長である知事は、それらの対処をしているでしょうか?

 
※上にある図の中心部分【都道府県】の記述にあるように、「国民保護計画」として、全都道府県で平成18年3月までに策定が完了し、その結果右のような文書が各都道府県知事から関係各所に配布されているはずです。ここには、知事からその管理する施設が生活関連等施設に該当する者に対して「当該施設の安全確保に配慮」するよう通知されています。

※その「施設」とは危険物質の取扱所であり、その「危険物質」に高圧ガスは含まれます。
  
  ※その詳細は、各都道府県のホームページなどに、以下のような内容で「国民保護計画」として明らかにされています。
http://www.kokuminhogo.go.jp/torikumi/kankeikikan.htm
l
この中で、「施設の管理者は、その自主的な判断に基づき、安全確保措置について定める」ものとされ、「危険物質等の取扱者に対し、危険物質等の取扱所の警備の強化を求め」ています。

※以下兵庫県版 http://web.pref.hyogo.lg.jp/pa18/pa18_000000006.html を例に、関連部分を抜粋します。

兵庫県国民保護計画[抜粋]

第3章 武力攻撃災害への対処に関する平素からの備え

武力攻撃事態等においては、県民生活に関連を有する施設や危険物質等の取扱施設等の安全確保について、特に配慮する必要があることから、これらの施設に関する平素からの備えについて示す。

第1節 生活関連等施設の安全確保
特にその安全を確保しなければならない施設である「生活関連等施設」について、これらの施設の把握、管理者に対する安全確保の留意点の周知等について定める。

1生活関連等施設の把握
(1) 生活関連等施設の定義(法102T)
生活関連等施設とは、次のいずれかに該当する施設であって、政令で定めるものをいう。
@国民生活に関連を有する施設で、その安全を確保しなければ国民生活に著しい支障を及ぼすおそれがあると認められるもの(発電所、浄水施設等)
Aその安全を確保しなければ周辺の地域に著しい被害を生じさせるおそれがあると認められる施設(危険物質の貯蔵施設等)

【生活関連等施設の種類及び所管省庁】(令27・28)

施行令

施設の種類

所管省庁名

28条4号   

高圧ガスの製造施設、貯蔵施設

経済産業省

2生活関連等施設の安全確保の留意点の周知等 (略)
(3) 施設管理者に対する要請
  県は、生活関連等施設の管理者に対し、安全確保の留意点を踏まえ、既存のマニュアル等を活用しつつ、資機材の整備、巡回の実施など武力攻撃事態等における安全確保措置について定めるよう要請する。この場合において、施設の管理者は、その自主的な判断に基づき、安全確保措置について定めることに留意するものとする。


第8章 武力攻撃災害への対処

武力攻撃により直接又は間接に生ずる人の死亡又は負傷、火災、爆発、放射線物質の放出その他の人的又は物的災害を防除し、及び軽減するため、武力攻撃災害への対処の実施方法等について示す。

第3節 生活関連等施設の安全確保
県は、武力攻撃災害への対処を行うに当たり、生活関連等施設の重要性にかんがみ、その安全確保について必要な措置等を講じなければならないことから、生活関連等施設の安全確保に必要な事項等について定める。

2 危険物質等に係る武力攻撃災害の防止及び防除
(1) 危険物質等の取扱所の警備の強化(法103T・U)
知事は、危険物質等に係る武力攻撃災害の発生を防止するため必要があると認めるときは、既存の法令に基づく規制措置を講ずるとともに、危険物質等の取扱者に対し、危険物質等の取扱所の警備の強化を求める

【危険物質等】(法103T)
武力攻撃事態等において、引火若しくは爆発又は空気中への飛散若しくは周辺地域への流出により人の生命、身体又は財産に対する危険が生ずるおそれがある物質で政令で定めるもの

【危険物質等の種類】(令28)

号番号

物質の種類

4号

高圧ガス保安法第2条の高圧ガス(同法第3条第1項各号に掲げるものを除く。)