化学物質の安全性に係る情報提供に関する指針 |
(目的)
第一条 この指針は、化学物質の安全性に係る情報提供に関し必要な事項を示すことにより、これを取扱う事業者の化学物質の安全性に関する理解を深め、その安全な取扱いを推進し、もって国民の健康を保護することを目的とする。
(定義)
第二条 この指針において「化学物質」とは、元素、化合物及びそれらの混合物のうち、医薬品、医薬部外品及び放射性物質以外のものをいう。
(化学物質を譲渡又は提供する取扱事業者が講ずる措置)
第三条 化学物質の製造の事業を営む者、業として化学物質を使用する者その他の業として化学物質を取扱う者(以下「取扱事業者」という。)は、別表上欄に掲げる危険性又は有害性を有する物質ごとにそれぞれ同表の下欄に掲げる化学物質(以下「危険有害化学物質」という。)を取扱事業者に対して譲渡又は提供するときは、その相手方に当該危険有害化学物質に係る次の事項を記載した文書(以下「化学物質安全性データシート」という。)を交付するものとする。ただし、同一の取扱事業者に対し、既に譲渡又は提供した危険有害化学物質に係る化学物質安全性データシートを交付している場合において、当該危険有害化学物質を譲渡又は提供するときはこの限りでない。
一 譲渡又は提供する者の氏名及び住所(法人にあっては名称及び所在地)
二 製品の名称及び危険有害化学物質の名称その他の危険有害化学物質の識別に関する事項
三 危険性又は有害性の種類
四 救急時の処置
五 火災時の処置
六 漏出時の処置
七 取扱い及び保管上の注意
八 暴露を防止するための措置
九 物理的性質及び化学的性質
十 危険性に関する事項
十一 有害性に関する事項
十二 生態影響に関する事項
十三 廃棄上の注意
十四 輸送上の注意
十五 適用法令
2 危険有害化学物質を譲渡又は提供する取扱事業者は、前項の規定による化学物質安全性データシートの交付に代えて、第五項で定めるところにより、その相手方の承諾を得て、前項に規定する事項を電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって次に掲げるもの(以下「電磁的方法」という。)により提供することができる。この場合において、当該危険有害化学物質を譲渡又は提供する取扱事業者は、当該化学物質安全性データシートを交付したものとみなす。
一 電子情報処理組織を使用する方法のうちイ又はロに掲げるもの
イ 危険有害化学物質を譲渡又は提供する取扱事業者の使用に係る電子計算機とその相手方の使用に係る電子計算機とを接続する電気通信回線を通じて送信し、受信者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録する方法
ロ 危険有害化学物質を譲渡又は提供する取扱事業者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録された前項に規定する事項を電気通信回線を通じてその相手方の閲覧に供し、当該相手方の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに当該事項を記録する方法(電磁的方法による提供を受ける旨の承諾又は受けない旨の申出をする場合にあっては、危険有害化学物質を譲渡又は提供する取扱事業者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルにその旨を記録する方法)
二 磁気ディスク、シー・ディー・ロムその他これらに準ずる方法により一定の事項を確実に記録しておくことができる物をもって調製するファイルに化学物質安全性データシートに記載すべき事項を記録したものを交付する方法
3 前項に掲げる方法は、その相手方がファイルへの記録を出力することによる化学物質安全性データシートを作成することができるものでなければならない。
4 第二項第一号の「電子情報処理組織」とは、危険有害化学物質を譲渡又は提供する取扱事業者の使用に係る電子計算機と、その相手方の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織をいう。
5 危険有害化学物質を譲渡又は提供する取扱事業者は、第二項の規定により第一項に規定する事項を提供しようとするときは、あらかじめ、当該相手方に対し、次に掲げるその用いる電磁的方法の種類及び内容を示し、書面又は電磁的方法による承諾を得なければならない。
一 第二項に規定する方法のうち危険有害化学物質を譲渡又は提供する取扱事業者が使用するもの
二 ファイルへの記録の方式
6 前項の規定による承諾を得た危険有害化学物質を譲渡又は提供する取扱事業者は、当該相手方から書面又は電磁的方法により電磁的方法による提供を受けない旨の申出があったときは、当該相手方に対し、第一項に規定する事項の提供を電磁的方法によってしてはならない。ただし、当該相手方が再び前項の規定による承諾をした場合は、この限りでない。
7 危険有害化学物質を譲渡又は提供した取扱事業者は、既に交付した化学物質安全性データシートの記載内容を変更する必要が生じた場合には、直ちにその変更を行い、譲渡又は提供された取扱事業者に改めて交付するものとする。
8 第二項から第六項までの規定は、前項に規定する記載内容の変更について準用する。この場合において、「危険有害化学物質を譲渡又は提供する取扱事業者」とあるのは、「危険有害化学物質を譲渡又は提供した取扱事業者」と読み替えるものとする。
第四条 危険有害化学物質を容器に入れ又は包装して譲渡又は提供する取扱事業者は、当該容器又は包装に当該危険有害化学物質の名称、その取扱い上の注意等を記載した表示をするものとする。
2 危険有害化学物質以外の化学物質を容器に入れ又は包装して譲渡又は提供する取扱事業者は、当該容器又は包装に当該化学物質の名称が識別されるような表示をするものとする。
(危険有害化学物質を譲渡又は提供される取扱事業者が講ずる措置)
第五条 危険有害化学物質を譲渡又は提供される取扱事業者は、譲渡又は提供されるときに当該危険有害化学物質に係る化学物質安全性データシートが併せて交付(電磁的方法による提供を含む。以下同じ。)されること又は既に交付されていることを確認するとともに、これを適正に管理するものとする。
2 危険有害化学物質を譲渡又は提供される取扱事業者は、化学物質安全性データシートの記載内容に配慮し、危険有害化学物質の安全な取扱いに必要な措置を講ずるものとする。
(危険有害化学物質を製造する取扱事業者が講ずる措置)
第六条 取扱事業者は、危険有害化学物質を製造する際には、当該危険有害化学物質の安全性に係る情報を収集し、その安全な取扱いに努めるものとする。
一 爆発性物質 火薬類取締法(昭和二十五年法律第百四十九号)第二条第一項第一号に掲げる火薬及び同項第二号に掲げる爆薬
二 高圧ガス 高圧ガス保安法(昭和二十六年法律第二百四号)第二条に規定する高圧ガス
三 引火性液体
【1】消防法(昭和二十三年法律第百八十六号)別表の第四類の品名欄に掲げる物品のうち一から四までに掲げるものであって、同表に定める区分に応じ同表の性質欄に掲げる性状を有するもの
【2】労働安全衛生法施行令(昭和四十七年政令第三百十八号)別表第一第四号に規定する引火性の物
四 可燃性固体又は可燃性ガス
【1】消防法別表の第二類の品名欄に掲げる物品で、同表に定める区分に応じ同表の性質欄に掲げる性状を有するもの
【2】労働安全衛生法施行令別表第一第二号に規定する発火性の物のうち可燃性を有する化学物質
【3】労働安全衛生法施行令別表第一第五号に規定する可燃性のガス
五 自然発火性物質
【1】消防法別表の第三類の品名欄に掲げる物品で、同法別表備考第八号に規定するもののうち、固体又は液体であって、空気中での発火の危険性を判断するための政令で定める試験において政令で定める性状を示すもの
【2】船舶による危険物の運送基準等を定める告示(昭和五十四年九月運輸省告示第五百四十九号。以下「危告示」という。)別表第六の自然発火性物質の部の品名の欄に掲げる物質(自己発熱性物質及びその他の自然発火性物質を除く。)
【3】労働安全衛生法施行令別表第一第二号に規定する発火性の物のうち自然発火性を有する化学物質
六 禁水性物質
【1】消防法別表の第三類の品名欄に掲げる物品で、同法別表備考第八号に規定するもののうち、固体又は液体であって、水と接触して発火し、若しくは可燃性ガスを発生する危険性を判断するための政令で定める試験において政令で定める性状を示すもの
【2】危告示別表第六のその他の可燃性物質の部の品名の欄に掲げる物質(その他の可燃性物質を除く。)
【3】労働安全衛生法施行令別表第一第二号に規定する発火性の物のうち禁水性を有する化学物質
七 酸化性物質
【1】消防法別表の第一類及び第六類の品名欄に掲げる物品で、同表に定める区分に応じ同表の性質欄に掲げる性状を有するもの
【2】危告示別表第七の酸化性物質の部の品名の欄に掲げる物質(その他の酸化性物質を除く。)
【3】労働安全衛生法施行令別表第一第三号に規定する酸化性の物
八 自己反応性物質
【1】消防法別表の第五類の品名欄に掲げる物品で、同表に定める区分に応じ同表の性質欄に掲げる性状を有するもの
【2】労働安全衛生法施行令別表第一第一号に規定する爆発性の物
九 急性毒性物質
【1】毒物及び劇物取締法(昭和二十五年法律第三百三号)第二条第一項に規定する毒物及び同条第二項に規定する劇物
【2】危告示別表第四の品名の欄に掲げる物質(その他の毒物を除く。)
【3】有機溶剤中毒予防規則(昭和四十七年労働省令第三十六号)第一条第一項第二号に規定する有機溶剤等
【4】特定化学物質等障害予防規則(昭和四十七年労働省令第三十九号)第十三条に規定する第三類物質等
【5】鉛中毒予防規則(昭和四十七年労働省令第三十七号)第一条第一項第一号に規定する鉛等
【6】四アルキル鉛中毒予防規則(昭和四十七年労働省令第三十八号)第一条第一項第三号に規定する四アルキル鉛等
十 腐食性物質
【1】危告示別表第三の品名の欄に掲げる物質(その他の腐しょく性物質を除く。)
【2】労働安全衛生規則(昭和四十七年労働省令第三十二号)第三百二十六条に規定する腐食性液体
十一 その他の有害性物質
【1】特定化学物質等障害予防規則第二条第一項に規定する第一類物質及び第二類物質
【2】鉛中毒予防規則第一条第一項第一号に規定する鉛等
【3】四アルキル鉛中毒予防規則第一条第一項第三号に規定する四アルキル鉛等
【4】労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)第二十八条第三項に基づき指針を公表した化学物質
【5】平成四年二月十日付け基発第五十一号通達等により公表した変異原性が認められた既存化学物質等
【6】平成三年六月二十五日付け基発第四百十四号の三通達等により公表した変異原性が認められた新規化学物質等
【7】化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(昭和四十八年法律第百十七号)第二条第三項に規定する第二種特定化学物質及び同条第四項に規定する指定化学物質